安全について本気出して考えてみる(福知山線脱線事故 #2)
 21世紀の日本で、まさか100人以上の犠牲者が出る鉄道事故が起こるとは思わなかった。鉄ヲタとして、鉄道の安全設備について考えてみたいと思います。


●ATSはどうなっている?
 列車事故があると必ず出てくる言葉「ATS」(Automatic Train Stop 列車自動停止装置)。要は赤信号や減速表示を無視した場合に非常ブレーキが作動する装置。今回の事故では「速度制限区間なのにATSが対応していなかった」と指摘されています。

・福知山線のATSシステムはどうなっていた?
 ATS-Sw形を使用。これはどういうシステムかというと、旧国鉄時代のATS-S形(赤信号だとベルが鳴るが、確認操作をすれば突破できる。1989年のJR東日本総武線・東中野駅衝突事故で問題になった)をJR西日本が改良して、停止信号突破不可&地上側で設定した速度以上で通過した場合は非常ブレーキ作動、などの機構を加えたもの。だからシステム的に速度オーバーを検知できないわけではない。ただし、地上側のセンサー(地上子)がないと速度チェックできない。
 JR東日本は東中野事故以降、首都圏の路線を常時速度チェックできるATS-P形に交換した。今回の福知山線の事故車も、車両自体はATS-P形に対応している(尼崎から乗り入れるJR東西線がATS-P設置路線なので)。考えようによっては、速度超過で遅れを取り戻すのが常態化しているなら、速度チェック機構はないほうがいい、とも言える。東中野事故も、遅延回復のためにATSの確認操作だけして運転を続行するのが常態化していたのが事故につながった。

 ちなみに、日本で最初にATSを装備したのは、昭和2(1927)年開業の地下鉄銀座線。地下鉄は開業時からATSがあった。このときのシステムは、赤信号だと線路上にアームが立ち上がり、車両に付いているブレーキコックにぶち当たって非常ブレーキがかかるという単純な仕組み。でも、最初から安全装備を考えていただけあって、地下鉄では(運転操作のミスによる)重大事故は起きていない。
 あと、私鉄のATSは常時速度チェック機能をつけるように運輸省が定めていたので(国鉄が民営化してJRになるときに廃止)、安全性は高い。


●運転士が運転中に気絶したらどうなる?
 今回の事故でも、発生直前に運転士氏が運行指令の呼び出しに応答しなかったことなどから「運転士に異変があったのでは?」という意見が聞かれる。そういう場合の保安システムとして「デッドマン装置」と「EB装置」がある。

・デッドマン装置
 なんか嫌な名前の装置ですが、これはマスコン(master controller)のハンドルを握っている握力が弱まると、バネの力でハンドルが跳ね上がったりして、速攻で非常ブレーキがかかるシステム。新人だと、うっかり手を離して作動させちゃったりすることもあるらしい。私鉄車両はだいたい付いているが、JRはあんまり装備してない(もしかしたら全然ないかも)。今回の事故車、JR西日本207系にはない。

・EB(Emergency Brake 緊急停止装置)
 これは運転士が1分間何も機器操作をしなかった場合にブザーが鳴って、5秒以内に何らかの操作をするか、解除ボタンを押さないと非常ブレーキがかかる仕組み。JR西日本207系も装備している。

 こういったシステムがあるので、一応は運転士の「不測の事態」にも対応できるようになってはいる。ただ、EBは1分間なら暴走できてしまうシステムともいえる。


●過密ダイヤが事故を招いた?
 「過密」という言い方が既にネガティブなので微妙だが、密度の高いダイヤ=危険、ではない。密度の高いダイヤを支えるシステムがあって、乗務員や車両の運用上無理のあるスケジュールを組んでいなければ問題はない。例えば東京の地下鉄はずっと昔から分刻みのダイヤで、乗り入れ列車も多く走っているけど、運転操作上のミスによる大事故は起きていない。
 ちなみに、鉄道のスピードアップは「所要時間の短縮」以外に、折り返しサイクルを早くすることによって乗務員や車両の数を減らしてコストダウンできるという(経営側の)メリットもある。そのために、運転士と車掌がホームをダッシュして交代しないと折り返せないような余裕のないダイヤを組む鉄道もあったりする。JR西日本のアーバンネットワークがそういった目的でスピードアップを図っているかどうかはわからないが、駅での停車時間をかなり削っているのは確か。今回の事故も、どこかの駅で1分30秒の停車時間があれば、速度オーバーしなくても時間調整できたはず。


 今のところ、速度超過による脱線が事故の主要因という流れになってきていますが、今のマスコミの論調だと、ヒューマンエラー的な面(運転士氏の過去のオーバーランetc)ばっかりが強調されて終わってしまう気がする。機器故障の可能性が追及されてないのはなぜだろう?
 事故調査委の発表だと、線路からの逸脱はR=300mの曲線手前の緩和曲線で起きているようだし、単純な速度超過なんだろうか?161人もの死者を出した1963年の鶴見事故では「せり上がり脱線」が原因として浮上し、貨車の車輪断面形状の改良などがされたというし、もしかしたら今まで分かっていなかった新たな現象があるのかもしれない。しっかりした原因究明がなされることを望みます。
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by amai_mikan | 2005-05-01 03:12 | 雑記
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