ほくほく線に乗ってみる#2
 (#1のつづき)
 十日町といえば小学校の社会の教科書で「豪雪地帯」の例として載っていた気がする。さすがに11月後半なのでまだ雪は積もっていなかった。駅は高架で雪国の小さな町の駅という感じはあまりしない。ここはほくほく線内唯一の有人駅なので、何か「ほくほく線グッズ」でも売ってないかと思ったが特にそういうものはなかった。やっぱり意外に質素な鉄道なのかもしれない。
 特にどこかに行く目的はないので、駅の反対側に出て適当に商店街を歩いた。俺は適当な駅で降りて無意味に商店街を歩くのが結構好きなのだがこの商店街は開いてる店も多くてうらぶれた感じはしない。この日は朝からなにも食っていなかったのでラーメン屋でもあれば入ろうと思ったのだが、残念ながら飲食関係は全部「準備中」だった。閉鎖されている映画館とゲーセンがあって、ああやっぱ地方都市の映画館は消え行く運命だな、と思ったら中越地震で被災したため営業休止中と書いてあった。だいぶ記憶が薄れつつある(隣県でも)中越地震だが実はまだ1年ちょっとしか経っていない。十日町は比較的被害の少ないところだったはずだが、やっぱり地元はまだまだ大変なんだよなあと思う。

 40分くらいふらふらしてから駅に戻る。商店街を向いているほうの駅舎(北口か南口かわからないが)はJR飯山線と共用(というか、もともと飯山線の駅)になっている。バブル期だったらほくほく線開通と同時に「観光なんとかセンター」とかを併設した無意味に立派な建物になってそうなもんだが、ごく普通の昭和40年代的な駅だった。17時27分の越後湯沢行きで出発。駅を出るとゆるく右にカーブしながら走る。すでに外は真っ暗で、まばらな家の明かりを見ながら高架線を走っていると飛んでいるみたいな感じがする。
 十日町からすぐの「しんざ」を出るとトンネルに入る。十日町の駅でもらってきた「トンネル豆知識」という手作り感溢れるチラシによると、トンネルは全部で14ヵ所あり、このトンネルは全長10472mの「赤倉トンネル」で、JR以外では日本最長だそうだ。ちなみにチラシはほかにもあったがどれも職員がパソコンで作ったと思われるやつでいい味出していた(しかしやっぱり質素倹約というか質実剛健な鉄道だな)。トンネル内の駅「美佐島」(ここだけ唯一乗り降りがなかった)を過ぎて、しばらく走るとポイントを通り過ぎた音がして暗闇の中で停まった。超長いトンネルなのでこの区間でも行き違いができるように待避線がある。この列車の9分後に十日町を出る特急「はくたか17号」があるので、これに抜かれるんだろうと予測。前方に見える信号は、160km/h通過OKを示す「高速進行」(青信号が二つ点灯)を表示している。これは北越急行以外では見られない。しばらくすると特に動いていないのに耳がおかしくなってきた、ということは気圧変化→トンネルに列車進入だな、と思っていると後ろから明かりが迫ってきて特急が通過。確かに早かったが160km/hで通過しているという感じはあまりしない。まあ車内にいるから風圧も音もそれほど感じないのでそう思うのかも知れないが。

 六日町を出て上越線に入ると越後湯沢までノンストップ。車内の電光掲示板にいちいち「石打 通過」とか表示されるのが面白い。18時15分に湯沢に着くと、向かいのホームにさっきの特急の折り返し、18時46分発の「はくたか20号」が停まっていた。これに乗って直江津に戻ろうと思う。「はくたか」はかなり混む、と2ch鉄道路線板のほくほく線スレッドなんかにもさんざん書いてあるので、指定を取ろうとみどりの窓口に行ってみたらあっさり「グリーン車も含めて満席です」。速攻でホームに戻り席をゲット、と思ったらまだ車内清掃中でドアが開いてなかった。

a0016192_4223990.jpg さて「はくたか」です。20号の編成は金沢寄り6両が北越急行、後ろ3両がJR西日本の車両だった。ほくほく線に乗りに来たのにJR車に乗るのもなんだか面白くないので当然北越急行車の方に乗る。北越急行車は「Snow Rabbit Express」のエンブレムが入っているので速攻で携帯カメラで撮影して待ち受け画面にしたりしてみた。実はこの列車には前から乗ってみたくて、限定品の模型も持っていたりする。俺はガキの頃国鉄/JRの特急にほとんど興味を示さないというひねくれたお子様だったのだが、特急料金が払えるようになってくるとJRの特急もけっこういいもんだな、と思うようになってきた。とはいってもこれはJR西日本の車両と色違いなだけとはいえ、北越急行の車両なので私鉄特急なわけだが。
 しかしとりあえず「はくたか」は偉い。なんといっても新幹線以外では日本最高速度で走る列車なのに「スーパー○○」という名前じゃないところがとても偉い。スーパーあずさとかスーパー北斗くらいはまあ許せるが、はっきりいってこういう名前は安易だしスーパーマーケットかよと思う。小田急に「スーパーはこね」ができたときはかなりがっかりした。全然関係ないけど、前に博多から長崎に高速バスで行こうと思ったら「スーパーノンストップ」と「ノンストップ」というのがあって、何が違うんですかと聞いたら「スーパーは途中全部停まりません。ノンストップは○○と○○に停まります」と言われた。それってノンストップじゃねえだろ!

a0016192_423633.jpg まあそれはいいとして、車内は電球色の間接照明でけっこう落ち着いた感じがする。「あずさ」のE257よりは全然いい車両に思える。新幹線の時刻を見ると「Maxたにがわ451号」が34分、「Maxとき329号」が38分に着くので、この2本の客を受けるわけだが、車内はしばらく俺だけでうわさに聞く混雑とは程遠く、なんだぜんぜん余裕じゃねえか、と思う。が、前のほうの階段からダッシュしてくる人がぽつぽつ現れたと思ったらその後ろから怒涛のごとく人波が押し寄せてすぐに満席になってしまった。さすが東京―北陸間の最短ルート、国鉄時代の在来線特急全盛期を思わせる賑わいである。とか思っているとその後も第2波が到来して恐るべき勢いでデッキから通路まで埋まってしまった。さらにその後からも人が続々と現れてこれは乗れないんじゃないかという表情でわずかな空きを求めてあっちこっちのドアを行ったり来たりしている。はっきりいって休日夜の最終「あずさ」でもこんなに混んでるのは見たことがない。というかもはやお盆年末ニュース番組の「帰省ラッシュで混みあう東京駅新幹線ホーム」状態に達している。まさかここまで混むとは思わなかった。っていうか増結しろよと思う。9両では明らかに足りない。
 自分の隣りはおばあさんが座った。なんとなく嫌な予感がしたがやっぱり「座れなかったじいさん」が隣にいてなんとなく席を譲ったほうがよさげな雰囲気が漂う。がしかし、何かの用事の帰りだったら立ってもいいが、今日の俺はわざわざこの列車に乗りに来たわけで、それなのに車窓も見えない通路やらデッキに立たされるのは勘弁してほしいわけです。というわけで悪いが俺は積極的にこのジジババを無視して座り続けた。許せ。やっぱりこういうときはグリーン車の指定でも取っておいたほうがいいのかもしれない。かの内田百間も「用もないのに列車に乗るなら1等がいい」と書いていたと思った。
 
 通路の端から端までデッキのドアも閉まらないくらい人を詰め込んで定刻に発車。動き出してみるとこの車両はけっこううるさい。床下からインバーターの音がうわんうわん響いてくるし線路のノイズが台車を通じてゴリゴリ伝わってくる。静粛性ならさっきの普通電車のほうが全然優れている気がする。が、六日町を過ぎてほくほく線内に入ると静かになった。線路のクオリティが段違いに高いのがこれでもわかる。順調にスピードは上がっているが外が暗いのでどのくらいで走っているのかはよくわからない。が、トンネルに入ってわかった。まるで窓が開いてるかのごとく風が吹き抜ける。特急なので窓は開かないが混んでいてデッキのドアが開いているのでそこから入ってくる。でも確かこの電車は160km/h走行のために気密構造になってるんじゃなかったのか?
 トンネルを出て「しんざ」を通過すると座れなかったじいさんが「しんざだな」と一言。ということはこのジジババは地元民で、恐らく十日町で降りるんだろう。19時09分十日町着。ジジババも含め、驚くべきことにデッキや通路にいた人のほとんどが降りてしまった。ホームは人で溢れていた。いったいあの街のどこにこれだけの人が消えていくのか? 

a0016192_4233173.jpg あとはひたすら30分間疾走して直江津に19時39分着。84.2kmを53分で走っているので平均90km/hを超えているんだからやっぱり早い。せっかくなので先頭か最後尾車の写真でも撮ろうと思ってホームの端に行ったら先頭も最後尾もホームぎりぎりの位置に停まっていて写真を撮れるようなスペースはなかった。これだと増結はなかなか難しい。

 しかしほくほく線、どの列車も意外なほど地元利用者が多いのに驚いた。北越急行というのは開通時から将来がはっきり見えている期限付きの繁栄を約束された線だ。あと10年で新幹線が開通すれば赤字転落は確実と言われている。まあ国で言ったらブルネイみたいなもんである。でも、実は割とやっていけるんじゃないだろうか?まあ実際はそううまくはいかないんだろうが。とりあえず次に来るとしたら「ゆめぞら号」に乗らなくては。

 どうも大変長らくの長文お疲れ様でした。
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by amai_mikan | 2005-12-13 02:21 |
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